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ホルムズ危機下、英国は風力と太陽光で59億ポンドのガス輸入を回避

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英国の気候エネルギー専門メディア、カーボンブリーフ(Carbon Brief)の分析によると、英国は現地時間2026年2月に始まった米国とイランの衝突に端を発する「ホルムズ危機」以降、風力と太陽光による記録的な発電で、59億ポンド相当のガス輸入を回避した。2026年に入ってから、ガス火力による発電は前年比で約10%減り、風力と太陽光は電源構成で41%を占めた。

何が起きたのか

英国では2026年に入り、風力と太陽光による発電量が前年比で14%増え、電源構成で過去最高となる41%を記録した。一方、ガス火力による発電は25%にとどまり、前年比で約10%落ち込んだ。

カーボンブリーフは、この再エネの増加分が本来必要だったガス輸入をどれだけ減らしたかを試算し、ホルムズ危機の発端となった米国とイランの衝突以降で59億ポンドに達するとした。これは液化天然ガス(LNG)の輸送船100隻分以上に相当する規模だという。9月に入ってからだけでも、風力と太陽光の発電量が約10テラワット時という記録的な水準に達したことに加え、ガス価格の高騰が重なり、13億ポンド分の輸入回避につながった。

英国の卸売ガス価格は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻でロシアからの供給が止まって以来高止まりしており、2023年以降は2019年当時の約3倍の水準で推移してきた。そこへ中東での軍事衝突が重なり、2019年の約4倍にまで上昇して、9月には2022年のエネルギー危機以来の高値を記録した。冬の暖房需要期を控え、欧州のガス在庫も少なく、アジアとLNGの争奪戦になるとの見方から、価格はさらに上振れしている。

この価格高騰は、英国の家庭のガス料金を直撃した。料金規制当局オフゲム(Ofgem)の価格上限制度のもとで、現地の10月1日から、家庭用ガス料金は4月比で33%、年間約200ポンド上昇する。対照的に、電気料金の上昇は4%にとどまった。シンクタンク、ネスタ(Nesta)の担当者は、この差について「電気とガスの価格の連動は、すでに崩れ始めている」と指摘している。

背景

英国の電気料金は従来、発電の多くをガス火力が担ってきたため、ガス価格の変動がそのまま電気料金に連動する構造になっていたとされる。しかし近年、洋上風力や太陽光の設備が増え、発電量に占める割合が高まったことで、ガス火力の稼働を押し下げられるようになったとみられる。再エネが増えた分だけ輸入するガスの量そのものが減るため、価格が高騰しても輸入総額の膨張を抑えられる仕組みが働いているようだ。

欧州連合(EU)全体でも、危機の発端以降に化石燃料の輸入額が1千億ユーロ増えたとされ、低中所得国ほど輸入額の増加による打撃が大きいとの分析もある。英国の労働党政権は、電気料金と国際ガス市場の連動を断ち切る方針を掲げており、首相は党大会の演説で、再生可能エネルギーと原子力の拡大を急ぎ、家庭の電気料金引き下げにつなげる考えを示した。

日本にとっての意味

英国でこの仕組みが効いたのは、危機で値上がりした燃料と、再エネが置き換える燃料がどちらも発電用ガスで同じだったためだ。日本では事情が異なる。

経済産業省の資料によると、2025年の日本の原油輸入はホルムズ依存度93.0%に対し、LNG輸入は6.3%にとどまる。電力広域的運営推進機関の2026年度供給計画の試算では、送電端電力量の合計8,953億kWhのうち石油他はわずか172億kWh(約2%)で、火力の主力はLNG2,586億kWhと石炭2,746億kWhである。

つまり日本で再エネが代替できるのはLNGや石炭が中心で、ホルムズ依存が集中する原油との重なりは小さい。実際、財務省の2026年8月分貿易統計で輸入額を押し上げた主な品目は原粗油(前年同月比+58.7%)で、対米輸入でも原粗油が+1026.6%と急増しており、英国型の「再エネがガス輸入を直接押し下げる」構図とは異なる経路で危機の影響が表れている。