英国、ガソリン高騰でEV走行費がガソリン車の最大9倍安くなる
英国では原油価格の急騰でガソリンと軽油の店頭価格が上がり、軽油は過去最高水準に迫る一方、電気料金は規制の上限にほぼ抑えられたままだ。英国のメディア、カーボン・ブリーフの分析によると、夜間割引プランで充電した電気自動車(EV)の走行費用は、ガソリン車やディーゼル車の最大9倍安い。規制上限の料金で充電しても、なお約3倍安い。
何が起きたのか
カーボン・ブリーフの試算では、2026年2月に米国がイランを攻撃して以降、英国の軽油の平均価格は1リットル1.96ポンドまで38%上昇し、ガソリンも1.72ポンドまで31%上がった。背景には、イエメンのフーシ派とサウジアラビアの緊張激化などを受けて原油価格が1バレル100ドルを超える水準まで急騰したことがある。ロシアの製油所への攻撃も相次いでおり、軽油価格は初めて1リットル2ポンドを超え、過去最高になる可能性があるという。
この結果、英国では1キロ走るのにディーゼル車で13ペンス、ガソリン車で12.5ペンスかかる計算になる。一方、夜間割引プランで充電したEVはわずか1.4ペンスで、規制上限の料金で充電しても1キロあたり4.3ペンス程度にとどまる。それでも英国の道路を走る車の55%はガソリン車で、完全EVは6%にすぎない。新車販売に占めるEVの比率は2026年8月に約30%まで伸び、2025年8月の26.5%から上昇した。
背景
この差が生まれているのは、原油高が店頭の燃料価格にはほぼそのまま跳ね返る一方、電気料金は英ガス電力市場局(Ofgem)が3か月ごとに見直すプライスキャップ(price cap、電力・ガス料金の上限)に抑えられているためとみられる。英国で2026年10月に改定されるプライスキャップは主にガスの上昇分を反映したもので、電気の単価は1kWhあたり26.1ペンスから26.3ペンスへとほぼ据え置かれる。もっとも、ガス価格の上昇が卸電力価格に波及することで、2027年1月には電気の単価が約20%上がると見込まれている。
英国政府の推計では、EV充電の76%は自宅で行われており、家庭の充電料金にも上限が決まっていることが走行費用の安さを支えているとみられる。英国政府は2028年4月から、EVに1キロあたり約1.9ペンスの走行距離課税を導入する計画だ。それでもEVの走行費用がガソリン車やディーゼル車を大きく下回る構図は変わらないという。
日本にとっての意味
日本は英国とは逆に、燃料の側で価格を抑えている。政府は2026年3月、ガソリンの全国平均価格が170円程度を超えた分を全額補助する緊急的激変緩和措置を導入し、2026年9月17日適用分の支給単価は1リットル51.0円に達した。原油高はほとんど店頭価格に転嫁されていない。
一方、電気料金には、原油・LNG・石炭の輸入価格を数か月遅れで毎月の料金に自動反映する燃料費調整制度が働いている。政府は、使用量が増える2026年7〜9月使用分に限って低圧3.5〜4.5円/kWhの値引きを実施した。英国は燃料側が上がり電気側が止まっているのに対し、日本は燃料側を抑え電気側が動く構造で、EVの走行費優位が広がるかどうかは、二つの補助制度の設計と期限に左右されるとみられる。