教習コース跡に麻と石灰の壁の歴史博物館 オランダ・アイントホーフェン、展示用パビリオンの木材を再利用
オランダ南部の都市アイントホーフェンに、地域の1万年の歴史を体験しながら学ぶ博物館「ミュージアム・フォンク」が完成した。自動車教習所のコースだった土地に建ち、設計は地元オランダのスタジオ・マルコ・フェルメーレンが手がけた。屋外型の「先史村」博物館とアイントホーフェン博物館の統合にあわせてつくられた。
何が起きたのか
建物はくさび形で、外壁は麻と石灰を混ぜたヘンプクリートでできている。オランダ国内で前もってつくり、顔料で色を付けた石灰の漆喰を層のように塗り重ねた。くさびの形と地層のような壁で、建物が地面から突き出したように見える。屋上は草や低木で覆われ、歩いて上がれる。
構造には、同スタジオが2019年のダッチ・デザイン・ウィークのためにつくったパビリオン「バイオベースキャンプ」の直交集成板(CLT)を使った。もともと再利用しやすいようにつくられていた。ただ、フェルメーレン氏によると、再利用のCLTは施工会社に不慣れで、品質の保証が問題になり、いったん工場に戻して検査した。その後は「ほぼすべて」を問題なく使えたという。パビリオンの上面で雨風にさらされた板は、色むらや足跡まで残したまま館内に見せている。
館の中心は、来館者が地元の歴史を表す物を一緒につくり、それが展示の一部になる「制作小屋」だ。外壁には鳥とコウモリの巣を組み込み、教習コースのアスファルトは砕いて基礎に敷いた。暑い時期は高い部分の大きな換気口を開けて熱気を逃がす。
背景
先史村には、木と粘土とアシでつくった先史時代から中世までの建物が並ぶ。フェルメーレン氏は、身近な材料でできたそれらの建物は「その環境に根ざしている」と言い、新しい建物でも同じことを目指したと話す。予算は限られていたが、館は手ごろな植物由来の建て方と自然な温度調節の「実験場」になったという。
日本にとっての意味
ヘンプクリートの原料になる大麻草を、日本で育てる人はわずかだ。厚生労働省の大麻規制検討小委員会の資料(2022年)によると、国内で大麻草を育てる人は1954年の37,313人をピークに減り、2020年には30人、栽培面積は7ヘクタールだった。用途は神事に使う繊維や祭事に使う「おがら」がほとんどだという。資料は、海外では大麻草から建材などがつくられている例を挙げ、新たな需要が生まれる可能性に触れた。
その後の法改正で、免許の目的は繊維と種子の採取に限られなくなった。2025年3月からは、都道府県知事の免許を受ければ、製品の原料を採るために栽培できる。育てられるのは、酩酊成分のTHCが0.3%以下の大麻草に限られる。農林水産省は産地を支援する事業も設けたが、栽培を呼びかける案内で例に挙げた用途は飲食料品と化粧品で、建材は入っていない。