感染症・健康

米成人のワクチン接種率、忌避より「案内不足」「アクセス困難」が左右

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米国の非営利団体NFID(National Foundation for Infectious Diseases)がまとめた成人調査で、9割近くがワクチン接種を支持する一方、実際にインフルエンザ・新型コロナ・RSウイルス・肺炎球菌のいずれかを接種しようとした人は半数に満たなかったことが分かった。原因として目立ったのは、ワクチンへの不信感よりも「自分が対象かどうかが分からない」「予約や入手で手間取る」という案内と手続きの問題だった。

何が起きたのか

調査はNFIDの委託を受けたシカゴ大学NORCが現地時間の2026年8月13日から17日にかけて全米の成人1206人を対象に実施し、NFIDが現地時間9月24日にワシントンで結果を公表した。89%が「打ちたい人は誰でも接種できるべきだ」に同意し、ワクチンを重い感染症を防ぐ最も確かな手段の一つとみる人も77%に上るなど、総論としての支持は高かった。

ところが過去1年にインフルエンザ・新型コロナ・RSウイルス・肺炎球菌のいずれかの接種を試みた人は48%にとどまった。インフルエンザは44%、新型コロナは23%で、医学会が接種を推奨しているにもかかわらず、49%が「新型コロナワクチンは自分には推奨されていない、または分からない」と答え、インフルエンザワクチンについても28%が同じように答えた。

接種を試みた人のうち22%は、在庫不足や長い待ち時間といった問題に直面したと回答した。肺炎球菌ワクチンを求めた人では27%、RSウイルスワクチンを求めた人では23%が同様の壁に当たったという。また、2024〜2025年シーズンのインフルエンザによる入院者数について、米疾病対策センター(CDC)の推計値71万人に近い範囲を選べたのはわずか11%で、半数は40万人を下回る範囲を選んでおり、病気の重さそのものへの理解も薄いことがうかがえた。

背景

NFIDの報告書は、この結果から五つの教訓を挙げている。柱となるのは、ワクチン全般への賛意だけでは、人が「自分にはどれが必要か」を判断して行動に移すには足りないという指摘だ。年齢や持病によって推奨されるワクチンの組み合わせは変わるため、総論の支持があっても、個別の推奨が本人に伝わらなければ接種にはつながらない。

報告書はまた、医療従事者が一貫した分かりやすい説明をできる体制づくりや、接種の場そのもので判断を助ける情報を届けることの重要性も指摘した。費用や予約の分かりにくさ、在庫の有無といった、接種を思い立ってから実際に打つまでの間にある障壁を一つずつ取り除く必要があるという考え方だ。この調査は、Vaccine Integrity Projectや米国医師会を含む複数の団体が、新型コロナ・インフルエンザ・RSウイルスのワクチンの安全性と有効性の検証を発表した数週間後に公表された。

日本にとっての意味

米国の調査が示したのは、支持があっても「自分が対象か」という伝達の段階と、予約・費用という手続きの段階で接種率が目減りするという構造だ。日本でも同じ構図が制度の中に組み込まれている。

予防接種法は、新型コロナなど「B類」の定期接種には、接種を勧める勧奨(第8条)や本人の努力義務(第9条)を課していない。このため案内は市区町村の裁量に委ねられているとみられ、対応は割れる。

相模原市は2026年度、個別通知や接種券を送らず、自己負担7,000円で10月1日から翌年1月31日まで受け付けるとし、予約も医療機関へ直接申し込む方式にした。荒川区は75歳以上無料・74歳以下3,500円で、期間は10月1日から翌年3月31日と異なる条件を設定している。

高齢者肺炎球菌ワクチンも対象は65歳の人などに限られ、65歳を超える人への経過措置は2024年3月末で終了しており、対象を外れた人には案内が届きにくいとみられる。米国の調査が浮かび上がらせた「案内と手続きの欠落」は、年齢の刻みと居住地で条件が変わる日本の定期接種の仕組みとも重なる。