気候・災害

メコン川流域5カ国、2025年の森林喪失74万ヘクタール 保護区内でも深刻

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カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムのメコン川流域5カ国で2025年、合計74万6168ヘクタールの樹冠が失われた。バンコク都市圏に匹敵する広さで、このうち15万4000ヘクタール余りは原生林だった。5カ国いずれも前年より減少率は下がったものの、失われた森林のうち約20万ヘクタールは、本来保護されているはずの保護区の内側での喪失だった。

何が起きたのか

米メリーランド大学のGLAD研究所とGlobal Nature Watch(GNW、旧Global Forest Watch)が公表したデータをMongabayが分析した結果、2025年のメコン5カ国の樹冠喪失は前年から約25%減少し、2023年からの減少傾向が続いていることが分かった。専門家は、山火事の減少や取り締まりの強化、農産物の市場価格の低下などが要因とみられるとしつつ、短期的な減少が長期の傾向を意味するとは限らないと注意を促している。

カンボジアでは2025年の樹冠喪失が5万9000ヘクタール余りにとどまり、2003年以来の少なさとなった。2023年比ではおよそ半減した計算になる。それでも原生林の喪失は2万3000ヘクタール余りに上り、同国の喪失全体の4割近くを占めた。

特に目立つのが保護区内での喪失だ。カンボジアで失われた5万9000ヘクタールのうち、54%にあたる約3万2000ヘクタールは保護区の内側だった。最も被害が大きかったベンパー野生生物保護区では4400ヘクタール余りが失われた。同保護区では2002年から2025年の間に、面積の約77%が天然林からゴムなど単一作物の農園に転換されている。プレイラン野生生物保護区でも4068ヘクタールが失われた(2024年は9340ヘクタール)ほか、ヴィラチェイ国立公園では3216ヘクタールの森林が消え、同公園にとって記録の残る中で最悪の年となった。

森林保護活動家のマーカス・ハートケ氏はMongabayの取材に対し、森林は少しずつ劣化しながら死んでいくもので、最終的な皆伐に至る前に喪失の9割はすでに起きていると語った。そのうえで、データが示す数字の裏で何が起きているのか、現地調査が必要だと強調した。カンボジア青年ネットワーク代表のムー・チャンダラ氏は、国全体の数字は「心強い」が個々の保護区の状況は「憂慮すべきだ」とし、「保護区の指定だけでは不十分で、取り締まりが弱く、資源が乏しく、違法伐採や土地収奪が野放しのままでは意味がない」と指摘した。

背景

メコン川流域の国々では、道路やエネルギー関連のインフラ整備、鉱業開発が進む一方、農地への転換や違法な伐採が後を絶たないとされる。カンボジアの場合、企業などに広大な土地の使用権を与える「経済的土地利用権(ELC)」の付与に伴う土地転換が、森林減少の一因として指摘されてきた経緯がある。

保護区に指定されても、実効的な巡視や取り締まりの体制が伴わなければ伐採を防げない。天然林が単一作物の農園に置き換わる現象も、需要の大きい商品作物の国際価格の動向と連動しやすいとみられる。

日本にとっての意味

この調査が示すのは、保護区という「線引き」と、実際に伐採が起きる場所とのずれだ。ただし、林野庁の国別情報で確認できるカンボジアとミャンマーについては、日本との木材取引は細い。日本の木材・木材関連製品の輸入は、カンボジアから7億2000万円、ミャンマーから9億6000万円(いずれも2019年)で、それぞれ全体の1%以下にとどまる。カンボジアからの分は9割以上が紙・板紙・製紙用パルプ等だ。それでも、日本の輸入側の制度にも、似た構造のずれがある。

改正クリーンウッド法(令和5年成立、令和7年4月施行)は、木材を国内に最初に持ち込む輸入商社などに合法性の確認を義務づけたが、林野庁の手引きは、合法性の確認そのものには罰則が適用されないとしている。罰則が及ぶのは原材料情報の収集・整理や記録の保存、情報伝達といった手続き面だ。しかも輸入材について記録すべき伐採地域の情報は「国名」までで、それ以上の細かい地域までは求められていない。

対象も木材・木材製品と家具・紙類に限られ、天然林の転換先となっているゴムなどの商品作物そのものは対象外である。手続きを整えることと、伐採現場の実態を把握することの間には、日本の制度上も隙間が残っている。