気候・災害

密集するロヒンギャ難民キャンプ、地滑りの危険がさらに拡大

バングラデシュ の記事一覧 ・ アジア

バングラデシュ南部コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで、地滑りの危険が年々高まっている。政府が現地時間9月16日に公表した報告書によると、ここ数カ月でミャンマーからの新たな避難民15万人超がキャンプに入った。住居を広げるため、残った斜面はさらに切り崩されている。

何が起きたのか

バングラデシュ難民救済・帰還委員会の報告書によると、テクナフとウキヤの33のキャンプは合わせて約24平方キロメートルに広がり、公式にはそこに1,170,978人が暮らしている。報告書は、ここ数カ月で新たに15万人超が流入したとしている。限られた土地に人が集まり続け、密集した居住区は崩壊の危険にさらされている。

モンスーンの豪雨は毎年、キャンプ内で地滑りを引き起こしてきた。今年の現地時間7月4日から19日には200件を超える地滑りが発生し、少なくとも15人が死亡した。うち5人は10代の少女だった。

今年に入ってからの地滑りでは、1万3千人以上が住まいを離れたという。2018年から2025年までの累計では、キャンプ全体で3,100件を超える地滑りが記録され、7万3千人以上が被害を受けている。

背景

このキャンプは、砂質の丘陵地の森林を切り開いた場所に建てられている。2017年のロヒンギャ流入時には、応急的な居住地を確保するためにコックスバザールの森林1,502ヘクタールが失われた。その2年後、森林局は保護林3,230ヘクタール超が失われたと報告している。

世界最大の難民キャンプ群であるクトゥパロンでは、高台部分での斜面の切り崩しや道路・階段の建設が、地滑りや洪水の危険を広げてきたと2020年の研究が指摘している。2025年の研究では、クトゥパロンの1,726の斜面区画のうち、崩壊リスクが中程度から高いと判定された区画が、流入前の109から2021年には291に増えていた。共著者でダッカ大学助教のシャミマ・フェルドウシ・シファ氏は「住宅地が不安定な斜面へ広がり続ける限り、ロヒンギャ難民は地滑りの危険にさらされ続ける」と述べている。

難民関係の当局者はモンスーンのたびに危険な斜面に赤旗を立てて注意を呼びかけているが、それでも住民が立ち退きに応じない場合がある。クトゥパロンのキャンプ4では、赤旗が立てられた斜面になお住民が住み続けている様子が確認された。住民の一人、55歳の女性は、いま暮らす場所を離れるより、地滑りで命を落とす危険を選ぶと答えた。斜面の安定化を求める研究がある一方、当局は資金不足を大きな障害として挙げている。

日本にとっての意味

危険を示すことと、そこに住む人を実際に動かすことは別の段階だという構図は、日本の土砂災害対策にも当てはまる。国土交通省によると、2026年6月30日時点で全国の土砂災害警戒区域は721,014件指定されており、うち建築規制や移転勧告の対象となる土砂災害特別警戒区域は621,287件を占める。国交省自身、この制度の柱を「危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策」と説明している。

それでも平成30年7月豪雨では、土砂災害で死亡し被災位置が特定できた107人のうち69人が、すでに指定済みの警戒区域内で被災していたと国交省の速報値(平成30年8月15日13時時点)は示している。区域を指定し危険を周知するだけでは、そこに住む人が動くとは限らない。斜面に立てられた赤旗と、日本の警戒区域の指定は、どちらも危険を示す標識であって、人を動かす力そのものではない。