サンゴ礁、白化からの「回復時間」が世界的に縮小
世界のサンゴ礁を対象にした最新の国際評価で、サンゴが白化から回復するために使える時間そのものが失われつつある実態が明らかになった。国際的な監視ネットワークGCRMN(Global Coral Reef Monitoring Network、世界サンゴ礁モニタリングネットワーク)が現地時間2026年8月31日に公表した報告書は、1980年から2024年までの観測データをもとに、世界のサンゴ被度(海底のうちサンゴに覆われている割合)が長期的に低下していると指摘した。
何が起きたのか
報告書は123の国・地域、3万6886地点、8万7299件の調査から集めた2110万件の観測データを分析したもので、この分野で最大規模とされる。それによると、世界のサンゴ被度は1980〜2009年の平均30.2%から、2020〜2024年には平均27.3%へ低下した。2.9ポイント、基準期間比で9.5%の減少で、2024年単年では25.8%までさらに落ち込んだ。
背景には、米海洋大気庁(NOAA)が認定した「第4次の世界的白化現象」(2023年4月〜2025年半ば)がある。この期間、2023年から2024年の1年間だけでサンゴ被度は8.9%(相対値)減少し、これは記録上最大の年間減少幅だった。
過去には2014〜2017年の第3次白化の後、2017〜2019年にかけて被度が「約6%」戻った例もある。しかし報告書は、こうした白化が以前の「約10年に1度」から「4〜6年に1度」へ頻発するようになり、サンゴが回復し切る前に次の高水温が来る構図になっていると指摘する。
サンゴ礁上の平均海面水温は1985年から2025年の間に0.81℃上昇した。米国時間2026年9月10日にNOAAが発表したところでは、2026〜27年の北半球の秋から冬にかけて、エルニーニョ現象が「非常に強い」水準になる確率は90%を超えるという。
背景
白化とは、海洋熱波でサンゴの体温が上がり、共生する藻類を体外に排出してしまう現象を指す。藻類は光合成でサンゴに栄養を供給しており、これを失うとサンゴは栄養不足で弱り、死に至ることもある。近代的な記録が残る世界的な白化は1998〜99年、2010〜11年、2014〜17年、そして今回の2023〜25年の4回だ。
報告書は今回の被度の減少幅を「保守的な推計」だとも断っている。観測が始まった時点ですでに多くのサンゴ礁が劣化していたうえ、地域によって観測データの蓄積にばらつきがあるためだ。また被度の数字だけでは実態を見誤ることもあると研究者は指摘する。被度自体は元に戻っても、そこに生えるサンゴの種類の構成が変わり、生物多様性や魚のすみかとしての機能が以前より落ちる場合があるという。
日本にとっての意味
沖縄県の石西礁湖で環境省が続けている調査は、この「回復し切る前に次が来る」構図をそのまま記録している。同省は2016年と2022年を大規模白化の年として扱ってきたが、そこからわずか2年後の2024年9月の調査では、白化率84.0%の大規模白化が再び確認された。
同年12月の調査結果(2025年1月発表)で同省は「2022年の大規模白化以来、緩やかに回復してきたサンゴ被度が今回の大規模白化で再び低下」していると述べている。同省はさらに、白化率の数字が低く見えても土台となる被度自体が下がっていることに注意が必要だとも指摘している。報告書が世界規模で示した回復時間の欠如は、日本近海の定点調査でも先取りする形で確認されている。