地球の限界9項目中7項目が超過、陸の炭素吸収源に警鐘
プラネタリー・バウンダリー(planetary boundaries、地球の限界)9項目のうち7項目が既に安全な範囲を超え、悪化が続いていると最新の報告書が指摘した。脱炭素の計画が当てにする陸上の炭素吸収源が、ここ数十年停滞していることも警告した。
何が起きたのか
ポツダム気候影響研究所などが2026年9月に公表したプラネタリー・ヘルス・チェック(Planetary Health Check)2026年版は、地球の限界9項目のうち7項目が安全な範囲を超えたと報告した。共著者の一人であるレフケ・ツェーザー(Levke Caesar)氏は「7項目のすべてで、圧力は増している」と語った。
超過した項目は気候変動、生物多様性、新規化学物質(novel entities、プラスチックごみや核兵器の材料などの人工物質)、淡水利用、土地利用変化、窒素・リンによる汚染、そして2025年に加わった海洋酸性化の7つだ。
残る2項目のうち、オゾン層は安全な範囲にとどまるものの、回復は頭打ちになっているとみられる。大気中の微粒子(エアロゾル)による汚染リスクは世界全体では減少しているが、南アジア地域では依然として安全な範囲を超え、悪化が続いている。
報告書はまた、これまで影響が及ばないと考えられてきた海底にも人間の活動が達していると指摘した。
背景
プラネタリー・バウンダリーは、気候や生態系など地球のシステムが安定して機能し続けられる安全な範囲を、9つの領域で示す枠組みだ。ネットゼロ(排出を実質ゼロにすること)計画は、大気中のCO2が増えると光合成が促され植物の成長が進むCO2施肥効果(CO2 fertilization)によって、森林などの陸上の炭素吸収源が今後も強まっていくという前提に立っている。
この前提の上に、あと排出してよいCO2の量を示すカーボンバジェット(carbon budget)が組まれている。報告書は、吸収源が弱まればこのバジェットも縮むと指摘する。
報告書の主執筆者は、陸上の炭素吸収源がここ数十年停滞しているとの見方を示した。気候変動や生物多様性の損失、植生にかかる人間の圧力が要因とみられるという。ツェーザー氏も、CO2施肥効果で吸収源が強まるという想定について「必ずしもそうではない」と述べた。
日本にとっての意味
日本の削減目標である2035年度60%減・2040年度73%減は、実際の排出量から森林などの吸収量を差し引いた値で評価される。日本の計画も、報告書が指摘するのと同じように、陸上の吸収源が機能し続けることを前提にしている。
政府の集計では、森林吸収源対策による吸収量は2014年度の6,120万トンから2022年度には約4,570万トンまで減った。一方、2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画は、2040年度の森林吸収量の目標を7,200万トンとした。前計画(2021年閣議決定)の2030年度目標は3,800万トンだった。林野庁は、目標の数値が大きくなったのは、算定方法を国際標準に合わせ、全国の森林調査データから直接推計する方法に改めたためだと説明している。
実績は従来の方法、目標は新しい方法による見込み値で、測り方の違う数字が並んでいる。報告書が示したのは、計画が当てにする吸収量と実際の測定値がずれるという構図だった。日本では、それがこうした形で現れているとも言える。