南極の冬季海氷、48年の衛星記録で3番目の低水準に
米国立雪氷データセンター(NSIDC)の速報値によると、南極海氷は9月14日に冬季の最大面積1759万平方キロメートルに達し、48年前に衛星観測が始まって以来3番目に小さい値となった。専門家は、記録更新こそしていないものの低い状態が続いていることを懸念している。
何が起きたのか
NSIDCによる今回の数値は速報段階のもので、季節最大値の前後は南極海氷の変動が大きいとされる。ドイツ・アルフレッド・ウェゲナー研究所の極域気候科学者レティ・ローチ氏はカーボン・ブリーフの取材に対し、今季の最大値は「季節平均を大きく下回る」水準だったと述べ、「数十年にわたり安定または増加していた南極の冬季海氷の状況の後で、こうした低い値が続いているのは懸念すべきことだ」と指摘した。
韓国極地研究所のクレア・エアーズ氏によると、南極海氷は2月に平年に近い最小値を記録した後、冬季としては異例に少ない状態に戻ったという。7月の海氷面積は観測史上5番目、8月は4番目の低さで、7月の下位5記録はすべて2022年以降、8月の下位4記録はすべて2023年以降に集中しているとエアーズ氏は説明する。
さらに海氷が不足する海域は季節の中で入れ替わった。4月にはベリングスハウゼン海がほぼ無氷だった一方、隣接するアムンゼン海は平年より多かった。ところが8月末には気圧配置と風の変化により、ベリングスハウゼン海の不足はほぼ解消し、代わってアムンゼン海と東南極の広い範囲で氷が異例に少なくなった。
一方、北極の海氷は9月12日に年間最小の460万平方キロメートルに達し、2025年・2010年・2008年と並んで観測史上10番目の低さとなった。NSIDCは、観測史上で海氷面積が最も小さかった20年が、いずれも過去20年間に収まっていると指摘している。
背景
海氷面積は、海水がどれだけ暖まったかだけでなく、風がその氷をどこへ押し流すかにも左右される。南極大陸を取り巻く海域は地域ごとに風向きや気圧配置が異なるため、ある海域で氷が減っても別の海域で増えることがあり、全体の面積という一つの数字だけでは季節を通じた実態をつかみにくい。
北極では人為的な温暖化による海氷の減少と薄氷化が科学的にほぼ確立している。これに対し南極は、2015年頃までは拡大傾向にあった海氷が2016年以降大きく減少するという逆転が起きており、この変化が地球温暖化によるものか、自然の変動幅の範囲内なのかについて科学者の見解が定まっていない。ローチ氏は「今回の傾向が本当に構造的な変化なのかを見極めるには、より多くの年数の観測が必要だ」と話しており、判断には時間がかかる段階にある。
日本にとっての意味
南極で起きている「面積は記録的でなくても低い状態が続き、しかも不足する海域が風で入れ替わる」という構図は、気象庁が1970/71年の統計開始以来観測しているオホーツク海の海氷でも現れた。2025/26年の最大海氷域面積は2026年2月15日の75.84万平方キロメートルで、統計開始以来2番目の小ささにとどまり記録更新ではなかった。一方で2月28日から5月10日までは4月30日を除き連日過去最小で推移し、低い状態の持続という点では南極と同じ形を示した。
要因についても、北部・中部で氷が拡大しない一方で南部は2月まで平年並みだったという地域差に加え、1月の低気圧による吹き寄せで一時的に減り、3月中旬の北風で再び接岸するという風による入れ替わりが挙げられている。気象庁は長期的な減少傾向(10年あたり5.9万平方キロメートル)を示しつつ、温暖化との関連をより確実に評価するには今後のさらなるデータの蓄積が必要だと留保しており、南極の専門家が語る判断の難しさと重なる。