COP31議長国トルコ、AI企業に電力使用の透明性求める新方針
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の年次会議COP31の議長国トルコが、人工知能(AI)企業に電力使用の透明性とクリーンエネルギー利用を求める新方針を打ち出した。UNFCCCのサイモン・スティル事務局長も同じ日、ビッグテックの事業継続の前提そのものが揺らいでいると警告した。
何が起きたのか
9月21日、トルコの閣僚でCOP31議長のムラト・クルム氏は、「アンタルヤ・プレッジ(Antalya Pledge)・オン・AI」と呼ぶ新たな誓約を11月開幕のCOP31で打ち出すと発表した。AIが「どう設計され、調達され、稼働し、展開され、測定され、管理されるか」について、気候変動対策を支える形で定める「政治的」な誓約と位置づけている。クルム氏は声明で「AIのエネルギー消費増大について公然と議論する必要があり、政府がその条件を定めるべき時が来た」とし、企業には自社の電力使用について透明性を保ち、事業をクリーンエネルギーで賄うことを求めると述べた。誓約がクリーンエネルギーに関する約束を含むのか、企業や各国政府の署名を募るのかといった詳細はまだ公表されておらず、議長国は開幕前に草案を示すとしている。
同じ日、UNFCCCのスティル事務局長はニューヨークでの演説で、AI業界のトップ企業は「事業継続の正当性という意味では薄氷の上に立ち、世論の支持という意味では水面下に深く沈みつつある」と述べた。データセンターの電力消費が石炭・石油・天然ガス由来の温室効果ガス排出を押し上げ、同時に家庭や企業の電気料金の上昇も招いていると指摘し、ニューヨークからテキサスまで、住民の反対でデータセンター計画が保留になる例が出ていることにも触れた。
背景
AIモデルの開発競争が激化する中、データセンターの電力需要は急速に膨らんでいる。国際エネルギー機関(IEA)によると、データセンターの電力使用に伴う温室効果ガス排出量は2024年から2030年の間に2倍以上になる見通しで、2020年代末にはデータセンター全体の消費電力が、上位5カ国を除くすべての国の消費電力を上回るとみられている。米国ではマイクロソフト、オープンAI、メタといった大手が化石燃料事業者と大型契約を結び、AI向け電力需要が天然ガス投資の拡大を後押ししているという。一方、もう一つのAI大国である中国では、IEAが2025年に公表した報告によれば、データセンター向け電力の約7割を石炭が賄っているとされる。
こうした状況にもかかわらず、AIの気候影響についての本格的な議論はこれまでのCOPでほとんど行われてこなかった。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2026年に入り、AI企業に環境影響の説明責任を求める取り組みを開始し、2030年までにすべてのデータセンターを再生可能エネルギーで稼働させるようAI大手に呼びかけている。AI推進派は、AIの活用がエネルギー効率化や再生可能エネルギーの最適化を通じて排出削減に貢献するとし、IEAも既存のAI活用が生む削減効果はデータセンター自体の排出増を上回りうると試算する。しかし批判派は、理論上の削減効果と実際に増え続ける排出量を単純比較するのは誤りだとし、AIが化石燃料企業の石油・ガス採掘の効率化にも広く使われている点を問題視している。
日本にとっての意味
日本でもAI向けデータセンターの建設が相次ぎ、電力需要の増加が電力会社や自治体レベルの課題として指摘されている。今回のCOP31をめぐる動きは、AI企業に電力使用の情報開示やクリーンエネルギー転換を求める国際的な圧力が、外交の場でも具体化し始めたことを示す。日本の電力会社やIT大手が海外でデータセンターを展開する際、あるいは海外のAI企業のサービスを利用する際にも、こうした基準がいずれ調達条件や投資判断に影響してくる可能性がある。詳細が固まっていない段階の誓約ではあるが、電力政策とAI政策が国際交渉の議題として結びつき始めた変化として注視する価値がある。